7画 (5) 準1

基本字異体字【兎】【兔】


[音]
[訓] うさぎ

《意味》

  1. うさぎ。耳が長く、あと足がよくきき、すばやく走る動物。「脱兎」。
  2. 月の異名。
    月の中の黒い影を、うさぎと考えたことから。この伝承は、すでに「楚辞」に見える。「玉兎」「兎」

【兎唇】いぐち

顔面裂奇形の一種。口唇の先天的破裂。みつくち。
「欠唇」とも書く。「としん」とも読む。

【兎】うさぎ

ウサギ目の哺乳類の総称。耳が長い。前脚が短く、後脚が長く、よく走る。上唇は縦に裂け、いわゆる三つ口で、上顎(じょうがく)の門歯が二対ある。草食。
鳥に擬して、一羽二羽とも数える。月に兎がすむという伝説は仏教説話で、インドから中国を経て日本にもたらされたが、月の兎の餅つき伝説は日本独自のもの
「兎」を用いた故事・ことわざ

【兎馬】うさぎうま

ロバの別称。
」とも書く。

【兎の毛】うのけ

ウサギの毛のように、物事がきわめて小さくかすかなこと。
「後ろめたいことは兎の毛ほどもない」
《兎の毛で突いた程》うのけでついたほど
非常に小さいことのたとえ。
「兎の毛で突いた程の怪我」

【兎角】とかく

  1. 雑多な事態の起こるさま。あれやこれや。なにやかや。いろいろと。
    「兎角するうちに」「他人のことを兎角言う前に自分の身を正せ」
  2. しばしば生ずる事態であることをいう語。ともすると。ややもすれば。
    「あせってやると兎角失敗しがちだ」「彼は兎角病気で休むことが多い」
  3. (「とかくの」の形で)あれこれとよくない意を表す。
    「兎角の見方がある」「兎角のうわさがある」
  4. 種々の事情は別として。いずれにしても。ともかくも。
    「兎角この世はままならぬ」
  5. 種々の事態。あれこれの事柄や言葉。
    「兎角を言うな」
「左右」とも書き、「兎角」「左右」は当て字。

【兎角毛】とかくきもう

この世にあり得ない物事のたとえ。
ウサギの角とカメの毛。
「亀毛兎角」「烏白馬角(うはくばかく)

【兎燕麦】ときえんばく

名ばかりで実のないもののたとえ。
「兎葵」は草の名、イエニレ(セツブンソウの古名・誤用漢名)。「燕麦」はカラスムギ。
ともに、食べられそうな名前がついてるが食べられないことから。
菟糸燕麦(としえんばく)」「有名無実(ゆうめいむじつ)

【兎起鶻落】ときこつらく

書画や文章の筆致に盛んに勢いがあることのたとえ。
野ウサギが跳び上がり、ハヤブサが獲物めがけて急激に飛び降りるような勢いをいう。
「鶻」はハヤブサ。

【兎起挙】ときふきょ

すばやいことのたとえ。
「鳧挙」はカモがパッと飛び上がる意。
「兎()(かも)挙がる」が書き下し文。

【兎死狗としくほう

利用価値のある間は用いられるが、無用になると捨てられること。
ウサギが殺されると、猟犬は不要になり煮て食べられてしまうことから。
狡兎(こうと)死して走狗(そうく)()らる」ともいう。
狡兎走狗(こうとそうく)」「得魚忘筌(とくぎょぼうせん)」「鳥尽弓蔵(ちょうじんきゅうぞう)

【兎死悲】としこひ

同じ仲間の不幸を悲しむこと。
他人の災いと同じことが、いつ自分に降りかかってくるか分からないたとえ。
ウサギが人間に捕まって殺されると、キツネが今度は自分の番かと悲しむ意から。
「兎死して狐悲しむ」が書き下し文。
狐死兎泣(こしときゅう)」「狐兎之悲(ことのかなしみ)

【兎走飛】とそううひ

月日の速く過ぎ去ることのたとえ。
太陽には三本足のカラスがおり、月にはウサギがいるとした神話から、「烏兎」で歳月や月日にたとえる。
「烏飛兎走」とも言う。
露往霜来(ろおうそうらい)」「烏兎匆匆(うとそうそう)

【兎に角】とにかく

いろいろな事情・条件があったとしてもそれは別として。他の事情はさておいて。いずれにしても。
「兎も角」とも言う。
「とにもかくにも」「とやかく」「ともかくも」も、それぞれ「兎にも角にも」「兎や角」「兎も角も」と書く。

【兎児傘】やぶれがさ

キク科の山野草。
「破れ傘」とも書く。
「兎児傘」は漢名で、ウサギの子どもの傘という意。
植物園へようこそ!ヤブレガサ

飛兎走】うひとそう

「兎走烏飛」

目兎耳】えんもくとじ

トビのように目ざとく見つけることのできる目と、ウサギのようによく聞こえる耳。
新聞記者・雑誌記者・放送などの報道関係者を言う。
飛耳長目(ひじちょうもく)」「長目飛耳」

【玉兎銀蟾】ぎょくとぎんせん

月のこと。
「玉兎」は月に住むというウサギ。「銀蟾」は月に住むというヒキガエル。それぞれ転じて月を表す。
玉蟾金兎(ぎょくせんきんと)

【金玉兎】きんうぎょくと

太陽と月。また、月日のたとえ。
中国古代の伝説で、「金」は太陽にいるという三本足のカラスで日を表し、「玉兎」は月にいるというウサギで月を表す。
白兎赤烏(はくとせきう)

【狡兎三こうとさんくつ

身を守るのに極めて用心深いことのたとえ。
困難や災難を逃れるのが巧みであることのたとえ。
「狡兎」はすばしこく狡賢(ずるがしこ)いウサギのこと。
すばしこく狡賢いウサギは、いざというときのために三つの隠れ穴を持っているという意から。
狡兎三穴(こうとさんけつ)

【狡兎良こうとりょうく

戦ってきた敵国が滅びると、先頭に功績のあった家臣が有害無用として殺されることのたとえ。
転じて、役に立つときはさんざん利用され、不要になると見捨てられることのたとえ。
ウサギがみんな死んでしまうと兎狩りに使う猟犬も無用になり、煮て食われてしまうという意から。
「狡兎死して良狗煮らる」の略。「狡兎死して走狗(そうく)()らる」とも言う。
狡兎走狗(こうとそうく)」「得魚忘筌(とくぎょぼうせん)」「鳥尽弓蔵(ちょうじんきゅうぞう)

子搏兎】ししはくと

簡単と思われることでも油断せずに全力を尽くして努力すべき事のたとえ。
ライオンは力の弱いウサギを捕まえるのにも努力すべき事のたとえ。
「獅子兎を()つ」が書き下し文。

【守株待兎】しゅしゅたいと

古いしきたりにとらわれて融通が利かないこと。
また、偶然の幸運をあてにすること。
「守株」は木の切り株を見守ること。
急にとび出してきたウサギが木の切り株にぶつかって死んだのを見た農夫が、仕事もせずに毎日切り株を見張ってウサギの出てくるのをずっと待っていたため、畑は荒れ果ててしまったという中国の故事による。
「株を守りて兎を待つ」が書き下し文。「守株(しゅしゅ)」「(くいぜ)を守る」とも言う。
旧套墨守(きゅうとうぼくしゅ)」「刻舟求剣(こくしゅうきゅうけん)

【処女脱兎】しょじょだっと

始めは大したことの無いように見せかけて、後には見違えるほどの力を発揮するたとえ。
始めは処女のようにしとやかに弱々しく見せかけて相手を油断させ、後にはウサギのような突進で圧倒する変化の妙を示す兵法。
「始めは処女の如く後に脱兎の如し」の略。

【脱兎之勢】だっとのいきおい

素早い動き。
「始めは処女の如く後に脱兎の如し」

【雉兎】ちと

  1. キジとウサギ。
  2. キジとウサギを捕らえる猟師。
    「雉兎の者」ともいう。

【二兎を追う者は一兎をも得ず】にとおうものはいっとをもえず

同時に違った二つの事をしようとする人は、結局その一方の成功さえもおぼつかないことのたとえ。
ローマのことわざから。
(あぶはち)取らず」「欲の熊鷹(くまたか)(また)裂くる」「一も取らず二も取らず」
「一挙両得」「一石二鳥」

【白兎赤はくとせきう

時間のこと。
「白兎」は月にいるというウサギで月を表し、「赤烏」は太陽にいるという三本足のカラスで日を表す。烏兎。
金烏玉兎(きんうぎょくと)

【始めは処女の如く後は脱兎の如し】はじめはしょじょのごとくのちはだっとのごとし

始めは大したことがないように見せかけて相手を油断させ、あとになると目を見張るような力を発揮するたとえ。
また、始めはのろのろとしていながら、あとで素早い行動をとるたとえ。
始めはうぶな処女のようにやさしく静かにして敵を油断させ、後には逃げるウサギのように素早く行動して敵に防ぐ余裕を与えない意から。
四字熟語で「処女脱兎(しょじょだっと)」「後如脱兎(こうじょだっと)」とも言う。

【飛兎竜文】ひとりゅうぶん

ひときわ優れた子ども。
「飛兎」も「竜文」も昔の有名な駿馬の名。
「竜」は「りょう」、「文」は「もん」とも読む。

《字源》

ウサギの象形。
「兎」の甲骨文字。

《字体》

 異体字が多い字ですが、三国時代・呉の行書(急就章by皇象)や唐代の楷書(道因法師碑by欧陽通)ではの形、元代の行書(by楊維楨)などではの形で書かれてる。康煕字典体であるの形(『説文解字』記載の篆書を楷書体化したもの)で書かれたものは見られない。
手書きの楷書で書く場合はの形で書いて問題ない。
台湾の常用國語ではを採用しており、それに従う」「」「を採用している。
  
なお、下部の左払いは、上に突き抜けると下につくがあるが、もとは字体の違いではなくデザインの差(明朝体活字設計上の表現の差)。手書きの楷書では、前者の方がよく見られる。
表外漢字における字体の違いとデザインの違い」の「表外漢字における該当例」4-B-(2)続けるか、切るかに関する例

日本では、「兎」「」「いずれも常用漢字ではないため、字体の整理はなされていないが、伝統的な手書きの楷書や、いずれも常用漢字になっている台湾の例に倣って、で統一して書くのが望ましい。

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