【蕩】 15画 (12) 準1級


[音] トウ
[訓] うご
とろける
びやか
ほしいまま
みだ
はら
あら

《意味》

  1. 広くゆきわたる。ゆらゆら広がっているさま。
  2. うごく。うごかす。やぶる。ゆらゆらとうごかす。ゆれうごいてこわれ崩れる。「蕩尽」
  3. ほしいままにする。酒色などにおぼれる。また、物事にしまりがなくでたらめであるさま。「放蕩」
  4. 勢いよく洗い流す。よごれやじゃまなものをきれいに除く。「掃蕩」
  5. うごきはじめる。胎動する。
2.3.4.「盪」

【蕩佚簡易】とういつかんい

のんびりして自由なこと。寛大で優しいこと。
また、ほしいままでしまりのないこと。
「蕩佚」はのんびり自由なこと。「簡易」は簡単でやさしい。性格が穏やかでさっぱりしていること

【蕩産】とうさん

財産を使い尽くすこと。破産。

【蕩児】とうじ

放蕩息子。道楽息子。また、酒色にふける者。女遊びをする者。道楽者。

【蕩尽】とうじん

道楽や遊びで全財産を使いはたすこと。

【蕩然】とうぜん

  1. ひろびろとしているようす。
  2. 跡形もなくなるようす。洗い流されて何もないこと。
  3. かってきままなさま。だらしのないさま。

【蕩蕩】とうとう

  1. 広々として大きいようす。
  2. おだやかなようす。
    「春日蕩蕩として…」
  3. 水の勢いが激しいこと。
    「海の水が蕩蕩としぶきをたてる」

【蕩揺】とうよう

揺れ動くこと。また、揺り動かすこと。
揺蕩(ようとう)揺動(ようどう)

【蕩ける】とろける

  1. 熱せられて固体が溶けて流動状になる。溶けてやわらかくなり、形がくずれる。
     「暑さで(あめ)が蕩けた」
  2. 心をひかれて気持ちにしまりがなくなる。理性を失う。うっとりする。
    「心が蕩けるような恋のささやき」「蕩けた表情になる」

蕩】いんとう

酒色におぼれて、生活が乱れるようす。

蕩】こうとう

  1. 広々としたようす。
  2. 志が大きく奔放であるようす。

【春風駘蕩】しゅんぷうたいとう

  1. 春の風がおだやかに吹くようす。
  2. 態度や性格がのんびりしておおらかなようす。
    「春風駘蕩たる人物」

【掃蕩】そうとう

残っている敵・賊などをすっかり討ちはらうこと。また、好ましくないものをすっかりはらい除くこと。
「掃討」とも書く。

【揺蕩う】たゆたう

  1. 定まらずにゆらゆらとただよう。
    「波間に揺蕩う一隻の小舟」
  2. 決心が付かずにためらう。
    「彼はあまりのことに揺蕩った。」
終止形、連体形は「たゆとう」とも発音される。

蕩】てきとう

汚れを洗い落とすこと。
「滌盪」とも書く。

【漂蕩奔逸】ひょうとうほんいつ

当てもなく走り回ること。
「漂蕩」はさすらう、さまよう意。「奔逸」は自由に走り回る意。

【放蕩】ほうとう

酒や女におぼれて、品行の悪いこと。
「放蕩息子を勘当する」
「昔の放蕩癖が治らない」

【放蕩三ほうとうざんまい

勝手放題にすること。酒色におぼれて品行が悪く、勝手気ままなこと。
「三昧」はそのことに夢中になって他をかえりみない意。

【放蕩不羈】ほうとうふき

気の向くまま勝手に振る舞う。
「不羈」は何ものにも束縛されない意。

【放蕩無頼】ほうとうぶらい

酒色にふけり、身を持ち崩すこと。
「無頼」は性行がよくない意。

【見蕩れる】みとれる

うっとりとして見入る。心を奪われて見つめる。
「見れる」とも書く。
見惚(みほ)れる」

《字源》

「蕩/*N.rˤaŋʔ/, /*lˤaŋ-s/BSは、義符「艹(艸)」と声符「湯/*l̥ˤaŋ/BSから成る形声字。
『Baxter-Sagart Old Chinese reconstruction』によると、語義「beat furiously (of the heart):激しく鼓動する」には/*N.rˤaŋʔ/の再構音が、語義「throw out, purify from:投げ捨てる、浄化する」には/*lˤaŋ-s/の再構音が与えられている。
「湯/*l̥ˤaŋ/BSは、義符「水」と声符「昜/*laŋ/BSから成る形声字。
Baxterの体系では、声符「昜/*laŋ/BSは、中古音ではyangに変化し、日本にはヤウ(ヨウ)で伝わった。声符「湯/*l̥ˤaŋ/BSlが無声(̥)咽頭化(ˤ)した *l̥ˤ-や*r̥ˤ-を持っていて、中古音でthangに変化し、日本にはタウ(トウ)で伝わった。参考に「昜」の諧声系列の音の変化を記す(上古音>中古音>日本語音の順)。
「昜」「陽」 *laŋ > yang > ヤウ(ヨウ)
「傷」 *l̥aŋ > syang > シャウ(ショウ)
「腸」 *lraŋ > drjang > チャウ(チョウ)
「湯」 *l̥ˤaŋ > thang > タウ(トウ)
同じ諧声系列でも上古音での声母が咽頭化や無声化により微妙に異なると、中古音、日本語音で最終的に異なる音になっていく。
「昜」は甲骨文字初期では「丂」の上に「日」がある形。ここでの「丂」「柯」の初文で木の枝(枝柯(しか))の形。
金文から太陽光を表す「彡」が加わり、「昜」は樹木の枝から太陽光が射している形。「陽」「暘」の初文。
「昜」の甲骨文字。
「昜」の金文。

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