【犢】 19画 牜(15) 1級
[音] | トク |
[訓] | こうし |
《意味》
こうし。牛の子。
【犢】こうし
牛の子。子どもの牛。
「子牛・仔牛」とも書く。
【犢鼻褌】ふんどし
男子が陰部をおおい隠す細長い布。下帯。まわし。たふさぎ。ふどし。
「褌」とも書く。
【孤犢乳に触れる】ことくちちにふれる
親不孝のたとえ。
「孤犢」は父親のいない子どものたとえ。父親のいない子どもは母親に甘えて乳離れできないので、わがままに育つことから。
【舐犢之愛】しとくのあい
親が自分の子を深く愛することのたとえ。
親牛が子牛をなめてかわいがる意から。
「老牛犢を舐む」ともいう。
《字源》
「犢(/*lˤok/BS、/*l'oːɡ/ZZ)」は声符「(イク/*luk/BS、/*luɡ/ZZ)」の形声字。
「」は「贖」の初文で本義は売買。
「()」は声符「(睦の古文)(/*mr[uk]/BS、/mluɡ/ZZ)」と義符「貝」から成る。
:「贖()」の金文。声符「(+目)」と義符「貝」から成る。
《字体》
「」部分の、「士」を「土」、「四」を「」と書くのが、初唐標準字体(伝統的な楷書の字体)。
さらに「売」と略するのは、草書体をもとに楷書体化されたもの。
江戸時代の『同文通考』(新井白石)、『倭楷正訛』(太宰春臺)などに載っていることから、宋・元時代の略字が日本の江戸時代ぐらいまでに伝わって使われていたと思われる。
「」を含む「讀(読)」「續(続)」「瀆」「犢」なども同様。
ちなみに、「うる」意の「賣(ばい)」を「売」に略するのは、「」と字形がほぼ同じため同じ略字になったもの。
『精選唐宋千家聯珠詩格』より
江戸時代の『同文通考』『倭楷正訛』などに載っていないが、室町時代末期の『精選唐宋千家聯珠詩格』の写本(右図)には確認できる(『当用漢字の新字体』(山田忠雄))ので、その頃には伝わってはいた模様。