【裘】 13画 (7) 1級


[音] キュウ
[訓] かわごろも

《意味》

かわごろも。獣の毛皮で作った服。

【裘】かわごろも

  1. 毛皮で作った防寒用の衣。かわぎぬ。
  2. 僧衣。また、僧。
    修行中の釈迦が鹿の皮をまとったという故事から。

【裘きゅうかつ

皮衣と(くず)帷子(かたびら)。冬の衣服と夏の衣服。
転じて、冬から夏まで。一年。
「裘葛を()える(=一年の年月がすぎる)」

【裘代】きゅうたい

僧服の一種。法皇・諸門跡、また参議以上で出家した人が参内のときなどに着る。俗人の直衣(のうし)に当たる。

【晏裘】あんえい(の)こきゅう

上に立つ者が倹約に努め、職務に励むこと。
「晏嬰」は人名で中国春秋時代の斉の宰相、「狐裘」は狐の脇の下の白い毛の部分で作った衣のこと。
晏嬰は、高価であるが一枚の狐裘を三十年間着用し、職務にいそしんだので名宰相といわれたという故事から。
「一狐裘三十年」ともいう。

袖】こきゅうこうしゅう

全体としては立派だが、よく見れば多少の難があるというたとえ。
「狐裘」はキツネの毛で作った高価な皮衣。「羔袖」は子羊の皮で作った安価な(そで)
高価な皮衣を着て立派に見えるが、袖が安価な子羊の皮では釣り合いがとれないという意。
白璧微瑕(はくへきのびか)」「山藪蔵疾(さんそうぞうしつ)

こきゅうもうじゅう

富貴の人の行いが治まらず国家が乱れることのたとえ。
富貴の人が着るキツネの皮衣の毛が乱れる意。
「狐裘」はキツネの毛で作った高価な皮衣。「蒙戎」は物が乱れるさま。

【黒之裘】こくちょうのきゅう

非常に高価なもののたとえ。
「黒貂」は黒いテン。「裘」は皮衣。黒いテンの毛皮で作った衣服は貴人が着るもので、非常に高価なものであったことから。

【千金の裘は一の腋に非ず】せんきんのきゅうはいっこのえきにあらず

国を治めたり大事業を成し遂げたりするには、大勢の人の知恵によらなければならないというたとえ。
キツネの(わき)の下の皮で作る高価な皮衣は、一匹のキツネの皮では作れない意から。

裘】ちょうきゅう

テンの毛皮で作った衣服。身分の高い人が用いる。

裘の地】ときゅうのち 

官を辞して隠棲する地。
「菟裘」は地名で、今の山東省泗水(しすい)県の北。春秋時代、()の国の隠公が隠居した所。

【肥馬軽裘】ひばけいきゅう

たいへん富貴なこと。また、富貴な人の外出の装い。
「肥馬」は肥えた立派なウマ。「軽裘」は軽くて立派な皮衣の意。
「軽裘肥馬」ともいう。

【羊裘垂釣】ようきゅうすいちょう

隠者のこと。また、隠者のような生活。
羊の皮衣を着て釣り糸を垂れる意。
「羊裘」は羊の毛皮で作った服。「垂釣」は釣り糸を垂れること。
「羊裘、(ちょう)()る」が書き下し文。

《字源》

「裘/*[g]ʷə/BS」は、義符衣」、声符(キュウ/*[g](r)u/BS)からなる形声字。
核母音が/ʷə//u/で異なり、上古音の時代(商代)では「求」は声符ではなく関係が無い。
毛皮の衣服を意味する言葉{裘}/*[g]ʷə/と、もとめるを意味する言葉{求}/*[g](r)u/の音声言語が後々合流して最終的には中古音/ɡɨu/になるが、その過程で声符「求」を選択した漢字「裘」が生まれた(比較的新しめの形声字)。
かつては「求」は皮衣の象形字で「裘」の初文であるとされたが、甲骨文字で別に存在するため否定される。
「裘」の甲骨文字(毛皮の衣服/*[g]ʷə/を表記するための文字)。
「衣」の象形文字に毛が生えたような形で、「求」を含まず「求」と関係ない。
「裘」の金文。「衣」の中に声符/*[g](r)u/BSがある。
「裘」の金文。「衣」の中に「求」を簡略化したような形の声符/*[G]ʷəʔ-s/BSがあり、こちらの方が声符の選択としては正しいように思える(核母音が同じ)。
「求」の金文。:「又」の金文(手の象形字)。
「求」の甲骨文字。
「求」「蛷」の初文で、多足の虫(一説にはハサミムシ)の象形。「もとめる」意は仮借。

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