【谿】 17画 谷(10) 1級
[音] | ケイ |
[訓] | たに |
たにがわ |
《意味》
たに。たにがわ。
「渓」
【谿壑】けいがく
「渓壑」とも書く。
【谿澗】けいかん
谷川。渓流。
「渓澗」とも書く。
【谿月】けいげつ
谷間の月。
「渓月」とも書く。
【谿谷】けいこく
深い谷。谷間。
「渓谷」とも書く。
【谿水】けいすい
谷川。また、谷川の水。
「渓水」とも書く。
【谿声】けいせい
谷川の水の音。谷川の流れの音。
「渓声」とも書く。
【谿流】けいりゅう
谷川の流れ。谷川。
「渓流」とも書く。
【山谿】さんけい
「山渓」とも書く。
【深谿】しんけい
深い谷。
「深渓」とも書く。
《字源》
声符は「奚(けい)」。
「奚」は、頭上に髪を結いあげた女子の形で、奴隷や犠牲に用いられた羌族のそれに近く、女性の奴隷。
髪の毛のさまから、多少屈折しながら長くつづくものの意がある。
:「奚」の甲骨文字
《字体》
「」の部分は、楷書では「」と書くのが運筆の面から自然で、歴史的にもこのように書かれてきた。
『同文通考』
(新井白石)
たとえば、「愛」や「受」を、「」や「」のように書くことはありえない。
「奚」も同様なので、「」と書いても差し支えない。
説文篆文に「渓(正字は溪)」は存在しないが、意味は同じなので、「溪」は「谿」より後に作られた異体字と考えられる。
つまり、基本字「谿」と交換略字「溪」、さらに略字の「渓」という関係。
古名跡などの用例では「溪」が多いので、無理して「谿」で書かず、常用漢字「渓」で統一してもかまわない。
ちなみに「奚」→「」の略字は、近代日本で頻繁に使われていた日本独自の略字。
1760年刊行の『同文通考』(新井白石)に見えるため少なくともこの頃には一般的だったと思われる。
:「谿」の説文篆文。