7画 (4) 準1級

姿形書換字【呑】


[音] ドン
トン
[訓]
 

《意味》

  1. のむ。ぐっとかまずにのみ下す。「吐」
  2. 相手を頭から問題にしない。相手を滅ぼす。

【呑雲吐霧】どんうんとむ

仙術を行う方士が、その術で雲を呑み、霧を吐くこと。また、方士が修行するとき、食事をせずに気を養うこと。

【呑花酒】どんかがしゅ

春の日に、花を愛で、酒を飲み、行楽の極みを尽くすこと。
「呑花」は花を盛んに愛でること。「臥酒」は酒を飲んで気持ちよくなり横になること。

【呑牛の気】どんぎゅうのき

牛をまるのみするぐらい気持ちの大きいこと。

【呑舟の魚】どんしゅうのうお

舟をのみ込むほどの大魚。転じて、(善悪を問わず)大人物。大物。
「呑舟の魚を逸す」
呑波(どんぱ)の魚」
《呑舟の魚は枝流に游がず》どんしゅうのうおはしりゅうにおよがず
大人物は高遠な志をもっているから、つまらぬ者と交わらず、細かいことにこだわらないことのたとえ。
呑舟の大魚は小さな川にはすまない意から。
「大魚は小池に棲まず」

【呑噬】どんぜい

  1. のむこととかむこと。
  2. 他国を攻め滅ぼして、その領土を奪い取ること。
    「呑食」

【呑吐】どんと

飲むことと吐くこと。飲んだり吐いたりすること。また、出したり入れたりすること。出たり入ったりすること。

【呑刀刮腸】どんとうかっちょう

心を入れ替えて善になることのたとえ。自分の過ちを悔い改め、再出発すること。
刀を呑んで腸を削り汚れを除き去る意から。

【呑吐不下】どんとふげ

他人に何とも応答できないことのたとえ。
呑むことも吐くこともできない意から。

【呑み行為】のみこうい

  1. 証券・商品取引業者の背信行為の一種。客から特定の注文を受けた業者が、自己名義の勝手な売買をしておいて、客の注文に応じた決済をすること。のみ。
  2. 競馬・競輪などで、法に定められた以外の者が馬券・車券などを売り出すこと。また、買うように頼まれた券を買わずに、当たり券についてだけあとで払い戻すやみ取引。のみ。
1.2.ともに違法行為。

【呑む】のむ

  1. 口に入れ、かまずにのどを通す。特に、酒をのむ。
  2. 受け入れる。「要求を呑む」
  3. 押しこらえる。「涙を呑む」
  4. 圧倒する。「気を呑まれる」「敵を呑む」
  5. 水流などが取り込む。「濁流が民家を呑み込む」

【呑気】のんき

  1. 性格がのんびりしているさま。物事にとんちゃくしないさま。「呑気な性分」
  2. 心配事や苦労がないさま。気楽なさま。「呑気に暮らす」
  3. 気が長いさま。落ち着いているさま。「呑気に構える」
気・暖気」とも書く。「気・呑気」は当て字。

【鯨呑】げいどん

くじらが、小さい魚などをひと口でのみこむ。転じて、強いものが弱いものを併合すること。

【剣呑】けんのん

あぶないさま。不安なさま。
「険難・険呑」とも書く。
「剣難」がなまった言葉。

【渾崙呑棗】こんろんどんそう

人の言葉や教えを考えもせずに受け入れても、本当には理解できていないということ。仏法の教えなどをそのまま信じるだけでは、本当の意味を理解できないこと。
「渾崙」は丸ごと、一緒くたにするさま。「棗」はナツメ。
ナツメの実を丸呑みしても味がわからないという意から。
渾崙(こんろん)(なつめ)を呑む」が書き下し文。

【蚕食鯨呑】さんしょくげいどん

強いものが弱いものを併合すること。強国が弱国の領土を強引に侵略すること。
カイコがクワの葉を食い、クジラが小魚を呑み込む意から。
単に「蚕食」「鯨呑」ともいう。

【漆身呑炭】しっしんどんたん

仇討ちのために様々な苦労をすること。復讐のために、どんな苦しみや苦労もわないこと。
「漆身」は体に漆を塗りつけること。「呑炭」は炭をのみこむこと。
中国春秋時代、(しん)予譲(よじょう)が主君の仇討ちのために、漆を体に塗ってかぶらせ、炭を呑んで(のど)をつぶして変装し、その機会をったことから。
「呑炭漆身」ともいう。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)

【清濁併呑】せいだくへいどん

心がひろく、善人でも悪人でもかまわず来るものすべてを受け入れる。
澄んでるものも濁っているものもかまわず一緒にのみこむ意から。
「清濁(あわ)せ呑む」が書き下し文。

【生呑活せいどんかっぱく

他人の詩文・語句などをそのまま盗みとること。剽窃(ひょうせつ)
いきたままの皮をはぎ、まるのみする意から。
「活生呑」とも書く。

【忍気呑声】にんきどんせい

怒りを口に出さず我慢すること。
「気」は怒り。怒りを抑えて息を呑んで声を出さない意から。
「気を忍び声を呑む」が書き下し文。
忍之一字(にんのいちじ)」「隠忍自重(いんにんじちょう)

【併呑】へいどん

他国を自分の勢力下に取り込むこと。

【雲呑】わんたん

ワンタン。中国料理の点心の一つ。小麦粉で作った四角形の薄皮で豚のひき肉を包んだもの。ゆでてスープに入れたり、揚げたりする。
「饂飩」とも書く。

《字源》

声符は「天(てん)

《字体》

楷書において、上部はのように、「夭(よう)ではなく(てん)で書くのが、字源的にも古名跡の字例からいって本来の形で、しかも横画は上を短く書くのが標準である。
上を短く書くのは「天」をはじめ、それを含む「蚕」「添」「昊」なども同様。
上を長く書く「天」は、清代の『康煕字典』が正字として採用したことから広まり、日本でも昭和35年の教科書までは下長だが、昭和36年から康煕字典体の上長の「天」が採用され現在に至る。
教科書用の活字で、上長の「天」を正式に採用している漢字圏の国は日本だけで、中国、香港、台湾、韓国はすべて下長のを採用している。
日本でも常用漢字表の付表「字体についての解説」に準拠して、許容としてを使用しても問題ないと考えられ、誤りとしてはならない。
第2 明朝体活字と筆写の楷(かい)書との関係について
 2 筆写の楷書では,いろいろな書き方があるもの
 (1)長短に関する例
  

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