【燕】 10画 (6) 準1級


[音] エン
[訓] つばめ
さかもり
くつろ

《意味》

  1. つばめ。渡り鳥の一種。
  2. やすんずる。やすい。ゆったり落ち着く。また、うちとけたさま。「安」に当てた用法。
  3. くつろぎ落ち着いて酒食を楽しむ。また、そのこと。「宴」に当てた用法。

【燕飲】えんいん

さかもり。酒宴。
「宴飲・讌飲」とも書く。

【燕窩】えんか 

中国南方の海岸にすむアナツバメが、唾液でかためて作る巣。海藻や羽毛がまざる。中国料理の高級材料の一つ。ツバメの巣。
燕巣(えんそう)

【燕頸】えんがんこけい

ツバメのようなあごと、トラのような首を持った意で、遠国の諸侯となるような人相の持ち主。また、堂々として優れた武勇の持ち主のたとえ。
後漢の班超はツバメのようなあごと、トラのような首をしており、初め官に雇われて筆書の仕事をしていたが、ある日思い立って出世をしたいと志し、占い師に見て貰ったところ、遠方で諸侯になる人相であると聞かされ、そのとおり戦勝して出世したという故事から。
燕頷虎頭(えんがんことう)

【燕雁代飛】えんがんだいひ

人が互いに隔てられているということのたとえ。すれ違いのこと。
また、代わる代わるやってくること。
ツバメが来る時節に雁が去り、雁が来る時節にツバメが去ることから。
参商之隔(しんしのかく)

【燕投筆】えんがんとうひつ

一大決心をして志を立てること。
また、文筆をやめて武の道に進むこと。
「燕頷虎頸」の故事から。

【燕居】えんきょ

家にくつろいでいること。
「宴居」とも書く。

【燕脂】えんじ

  1. べに、また、べに色。黒みを帯びた赤色。エンジ色。
    「燕脂色の上着がよく似合う」
  2. ベニバナを原料とした赤色顔料。
「臙脂」とも書く。

【燕雀】えんじゃく

つばめと、すずめ。転じて、度量の小さい人のたとえ。小人物。
《燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや》えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや
小人物には大人物の気持ちや考えがわからないというたとえ。
遠大な志のこと。
小さな鳥にどうして大きな鳥(鴻鵠)の心がわかろうか、という意。
「燕雀鴻鵠」ともいう。
鴻鵠之志(こうこくのこころざし)」「青雲之志(せいうんのこころざし)」「図南鵬翼(となんのほうよく)

【燕石】えんせき

玉に似て、玉でない石。まがい物。また、価値のないもの。
「魚目燕石」
燕山の石のことで、宝石に似てはいるが宝石ではないことから。

【燕麦】えんばく

イネ科の作物。麦の一種。ヨーロッパおよび西アジア原産の野生種を改良したもの。
種子は飼料とするほか、オートミールとして食用とし、またウイスキーの原料とする。
Wikipediaエンバク

【燕尾服】えんびふく

男性の夜間用正式礼服。上着の前丈が短く、背の裾が長く先が二つに割れて燕の尾のようになっている。色は主に黒。共布のズボン、白のベスト、白の蝶ネクタイ、黒のエメナル靴などと組み合わせて着る。
上着の後ろがツバメの尾に似ていることから。

【燕楽】えんらく

酒宴を開いて楽しむこと。うちとけて楽しむこと。またその酒宴。
「宴楽」とも書く。

【燕子花】かきつばた

アヤメ科の多年草。湿地に生える。ハナショウブに似るが葉は幅が広く、中脈は発達しない。高さ約70㎝。初夏、茎頂の苞の間に三個内外の濃青色・白色・斑入りなどの花を開く。
植物園へようこそ!カキツバタWikipediaカキツバタ
「燕子花」は漢名からの誤用。
若」とも書く。

【燕】つばめ

ツバメ科の小鳥の総称。また、その一種。
ツバクラメ。ツバクラ。ツバクロ。
Wikipediaツバメ
「乙鳥」とも書く。
《燕幕に巣くう》つばめばくにすくう
ひどく不安な状態のたとえ。また、極めて危険な状態のたとえ。
いつ外されるかわからない幕の上にツバメが巣を作る意から。
「燕の幕上(ばくじょう)に巣くうが(ごと)し」ともいう。

【燕去月】つばめさりづき

陰暦八月の異名。

【郢書燕説】えいしょえんせつ

こじつけること。道理にあわないことをあっているように説くこと。
また、賢人を登用すること。
昔、郢の人が燕の大臣に与える手紙を書いたとき、灯火が暗かったので「(しょく)()げよ」と命じたところ、誤ってこのことばを手紙に書きこんでしまった。ところが、これを読んだ燕の大臣は、これを「賢人を採用せよ」という意味にとって実行し、その結果国がよく治まったという故事から。

【魚目燕石】ぎょもくえんせき

本物と紛らわしい偽物のこと。また、偽物が本物の価値を損なうこと。
「魚目」は魚の目。燕石は燕山の石のことで、両方とも宝石に似ているが宝石でないことから。
似て非なるもの。
魚目混珠(ぎょもくこんしゅ)

【社燕秋鴻】しゃえんしゅうこう

出会ったばかりですぐ別れてしまうこと。ほんの一瞬出会うこと。
「社」は春と秋の社日のこと。ツバメはこれらの日に来て去るといわれている。
「鴻」は秋に飛来し春先に立つ雁のこと。
両方の渡り鳥が春と秋に入れ違いで見られることから、短い出会いをいう。

【海燕】たこのまくら

ウニの一種。ウニ綱の棘皮動物。褐色で、一面に短いトゲが生える。本州中部以南の浅海の砂底にすむ。饅頭貝。
の枕」とも書く。
Wikipediaタコノマクラ

《字源》

ツバメが飛ぶ姿。
「燕」の篆書。

【≪戻る】【トップページへ戻る】【進む≫】