【瀆】 18画 氵(15) 準1級
交換略字【涜】
[音] | トク |
[訓] | みぞ |
けがす | |
あなどる |
《意味》
【瀆す】けがす
よごす。また名誉などを傷つけること。
【瀆職】とくしょく
職をけがすこと。「汚職」の古い言い方。
【瀆聖】とくせい
神などの神聖をけがすこと。神聖冒瀆。
【瀆】みぞ
耕地に用水を通す水路。
【汚瀆】おとく
心や体がけがれること。また、けがすこと。
【溝瀆】こうとく
みぞ。どぶ。
《溝瀆に縊る》こうとくにくびる
つまらない死に方のたとえ。
自分で首をしめ、みぞに落ちて死ぬこと。
【自瀆】じとく
手淫。自慰。オナニー。マスターベーション。
自分で自分をけがす意から。
【冒瀆】ぼうとく
神聖・尊厳なものや清純なものをけがすこと。
「神を冒瀆する」
《字源》
「瀆(/*l'oːɡ/ZZ)」は声符「(イク/*luk/BS、/*luɡ/ZZ)」の形声字。
「」は「贖」の初文で本義は売買。
「()」は声符「(睦)(/*mr[uk]/BS、/mluɡ/ZZ)」と義符「貝」から成る。
:「贖()」の金文。声符「(+目)」と義符「貝」から成る。
《字体》
「」部分の、「士」を「土」、「四」を「」と書くのが、初唐標準字体(伝統的な楷書の字体)。
さらに「売」と略するのは、草書体をもとに楷書体化されたもの。
江戸時代の『同文通考』(新井白石)、『倭楷正訛』(太宰春臺)などに載っていることから、宋・元時代の略字が日本の江戸時代ぐらいまでに伝わって使われていたと思われる。
「」を含む「讀(読)」「續(続)」「瀆」「犢」なども同様。
ちなみに、「うる」意の「賣(ばい)」を「売」に略するのは、「」と字形がほぼ同じため同じ略字になったもの。
『精選唐宋千家聯珠詩格』より
江戸時代の『同文通考』『倭楷正訛』などに載っていないが、室町時代末期の『精選唐宋千家聯珠詩格』の写本(右図)には確認できる(『当用漢字の新字体』(山田忠雄))ので、その頃には伝わってはいた模様。